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入学式式辞(令和6年度)
4月に入り、そこかしこで命の芽吹きが感じられる毎日となってまいりました。
本日ここに、令和6年度北海道文教大学附属高等学校入学式を挙行するにあたり、学園常務理事様、PTA会長様、北海道文教大学附属幼稚園長様をはじめとするご来賓の皆様、また多くの保護者の皆様のご臨席をたまわり、このように新入生の皆さんを祝福できますことは、私ども教職員ならびに在校生にとりましてこの上ない喜びであります。皆様に衷心より厚く御礼申し上げますとともに、 保護者の皆様に、お子様のご入学を教職員一同心よりお祝い申し上げます。 併せまして、本校の教育活動へのご支援ご協力をお願い申し上げます。
139名の新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。みなさんのこれからの3年間が実り多いものとなりますことを、心より願っております。
さて、言うまでもなく本校は私学です。どの私学にも建学にあたっての「熱い思い」というものがあります。そしてその「思い」は、教育の方法論が変わったとしても時を超えて受け継がれ、それぞれの学校の教育の背骨となっています。
本校は1942年、戦時下において「道民の食生活を改善したい」との熱い思いを抱いた鶴岡新太郎・トシ夫妻によって設立された北海道女子栄養学校をその起源とし、80年あまりの歳月を積み重ねてまいりました。高等学校としての開学は1959年のことで、60有余年の伝統があります。その建学の精神は「清正進実」の4文字であらわされています。これは鶴岡夫妻の遺した学訓「清く正しく雄々しく進め」を凝縮したものです。「清く」とは「真理を探究する清新な知性」を、「正しく」とは「正義に基づく誠実な倫理性」を、そして「雄々しく進め」とは「未来を拓く進取の精神」を意味しています。真理を求める姿勢や正義感、誠実さやモラル、そしてチャレンジ精神は、たとえどのように時代が、そして社会が変わろうとも、人として普遍的に大切にされなければならないものであると私たちは考えます。「清正進実」の4文字目の「実」は「国民の生活の充実に寄与する実学の精神」をあらわし、地域社会に貢献する人材を育成したいとの開学以来の思いがそこに込められています。本校の教育目標、教育方針は、この「清正進実」を背骨として形作られています。在籍する3年の間、先生方が幾度となく訴えかける言葉の中にその精神を感じ取り、それをわが物として社会に羽ばたいていっていただきたいと願います。
語られ過ぎて陳腐にすらなっている話かもしれませんが、あえて語りたいと思います。
世界は今、歴史的にもまれな変化の只中にあり、社会の形そのものが大きく変わろうとしています。グローバル化のいっそうの進展。情報通信技術の飛躍的発展。そしてAIの登場と進化により今まさに突きつけられている「人はこれから社会の中で何を担い、どのように生きていくのか」という問い。従来の価値観や「このように生きていけば一定の幸福にたどりつける」といった標準的人生モデルはもはや崩壊し、誰かに追従していけば何とかなった時代は終わりを迎えようとしています。SNSを通じて玉石混交の膨大な情報が世界にあふれかえり、何を信じ、どう判断すればよいのか戸惑うことも多々あります。国境の壁は著しく低くなり、世界のさまざまな価値観を持った人々とともに生きていくことが求められています。今まさに、自分の生き様は自分で見出さなければならない時代、一人称で、能動態で考えなければならない時代に突入しているのです。こうした時代を生きていくことは確かに大変なことかもしれません。しかし、考えようによっては、自分を無意識のうちに束縛していた社会の空気や固定観念から解放され、自分が本当に大切にしたいものを大切にできる、主体的に物事を選択できるチャンスが訪れていると考えることもできます。コロナ禍において、この国の人々の同調圧力の強さや「みんな一緒」志向がくっきりと見えてきました。しかしこの感覚は新しく訪れる時代には「百害あって一利なし」と言っても過言ではありません。わが国は民主主義および法の支配を大切にする国の一つです。主体性と無軌道とを取り違えることなく、同調圧力や固定観念から脱却し、主体的で多様な価値観を容認できる、あるいは楽しめる自分をめざしてほしいと願います。
みなさんは未来の社会の形成者です。よりよき未来はみなさん若者が築いていくのです。今というこの時は、よりよき未来を築くための大切な準備期間です。高校生活は決して長くありません。学習はもとより、部活動や生徒会活動をはじめさまざまな場面に、それぞれの歩幅と熱量でかまいません、積極的に参加し、自分を成長させていただきたい、三年間をかけてより主体的な自分を作り上げていただきたいと強く願います。
みなさんが、この高校生活を機に未来に向けて飛翔し、大きな実りを手にすることとなりますよう祈念して、入学にあたっての式辞といたします。