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令和3年度 夏季休業前校長講話

皆さん、こんにちは!
令和3年7月27日 火曜日 夏休み前の講話を始めます。

昨年は、4月5月を臨時休校にしたため、この夏休み前の全校集会は、8月7日でした。今年は例年のように7月中に夏休みに入る「当たり前」の日程に戻り、とても嬉しく思います。
さて、令和3年度は、札幌キャンパスから、恵庭キャンパスへの移転ということもあり、1年生ばかりでなく、2・3年生も新しい校舎に慣れることからの始まりでした。
また、昨年度からの新型コロナウイルス感染症の再拡大防止のため、これまでの行事は規模を縮小したり、人数制限もしたりしての開催、また、前年度から延期していた3年生の修学旅行を4月にようやく実施することができたり、さらに、実施できなかった学校祭や遠足については、企画内容を変更しながら、今後に延期!となってしまうなど、まさに変則的な年度初めとなりました。
しかし、全校生徒437名の皆さんが、この4か月間を、大きな事故や災害にも遭わず、また、新型コロナウイルス感染症のクラスターも出さずに過ごせたことは、皆さんの日常の生活全般が、正しい行動であったことの証しです。まさに奇跡的な状況を作ってくれた期間となりました。
また、緊急事態宣言中は、先生方にも苦労をかけました。授業は5分短縮で、ZOOMによる授業と対面授業の併用ができる状況にすぐ対応してもらったり、部活動も時間短縮や練習方法などの工夫をしてもらったりと、本当に先生方は毎日頑張ってくれました。
おかげさまで、安全・安心な学校生活が続いているのだと実感しています。
これまで、さまざまな思いを抱きながらも、いつも元気に明るく学校に来てくれた生徒の皆さん、そして先生方に心から感謝します。有難う!

さて、これからお話しする内容は二つ、「考えること」と「数えること」についてです。
一つ目、「考えること」についてです。この場合の「考えること」には、疑問に思う・想像する・イメージする・意識する・そして、相手のことを考える、周りの人たちのことを考える、何より自分のことを考える・・・・・が含まれます。
ちょっと話は変わりますが、皆さんはウサギと亀がかけっこした童話を知っていますか?これは、いくら能力があっても、なまけたり途中で休んだりしたら、コツコツ地道に努力している者に負けるよ!という教訓的なお話しなのですが、私は、小さい頃から、このお話がなんか不自然で、不思議で、考えれば考えるほど疑問だらけでした。
童謡にもなっていて、歌詞一番では、「もしもしカメよ、カメさんよ。世界のうちにおまえほど、歩みののろい者はない。どうしてそんなにのろいのか」と、ウサギは亀を馬鹿にしたように言います。続く2番の歌詞はこうです。「なんとおっしゃるウサギさん、そんならお前とかけくらべ、向こうのこやまのふもとまで、どちらが先にかけつくか」
ここで疑問!ウサギは野山を駆ける動物、亀は水の中や水際近くで過ごす動物、なのに、亀はウサギを挑発するのです。
普通に考えれば、ウサギが当然勝つとわかっているのに、亀はウサギが昼寝してしまうことをわかっていたような~そこで、三番の歌詞は、ウサギの独り言、「どんなにカメが急いでも、どうせ晩までかかるだろう、ここらでちょっとひと眠り、グーグーグーグー グーグーグー」と、本当にウサギは寝てしまうわけです。ここで私はまた疑問が起きます。亀からの挑戦を受けたウサギなら、さっさとゴールに着いてから、ゆっくり眠っても良かったじゃないの?なぜ途中で寝ちゃったの?疲れていたのかな?
そして、正々堂々と戦うなら、亀はどうしてウサギを起こしてやらなかったの?
この時、亀は、これ幸いとウサギの眠っている脇を通って、ゴールを目指したのです。
見方を変えれば、亀はなんて意地悪で、優しくないのだろう?そして、案の定、4番の歌詞はウサギの反省「これは、寝すぎた しくじった、ピョンピョンピョンピョン ピョンピョンピョン」そして、最後の歌詞は、亀の勝利宣言「あんまり遅いウサギさん、さっきの自慢はどうしたの?」で終わります。
考えれば考えるほど、不思議だった話しを、私と同じように考えた人がいたことが、つい最近わかってビックリしました。
それは、元検事で、元弁護士の「田中 森一(もりかず)さん」という方と、早稲田大学名誉教授の「加藤 諦三(たいぞう)さん」という方です。
1人目の田中さんは、ある日、お母さんからこのウサギと亀のことで質問されたそうです。「カメさんの取った行動は正しかったと思うかい?」と。
この場合はウサギと亀ですが、人に置き換えた時、正しい行動は何かを、お母さんから質問され、考えたそうです。そしてその教えは、結局「論語」の「正義」にたどり着いた!とのことでした。
そして、2人目の加藤さんは、このウサギと亀、それぞれの状況分析をしています。ウサギも亀も、自分が嫌いで、自分のことが嫌いな者同士の争いだったのではないか?また、ウサギはウサギの仲間たちに認められていない独りぼっちで、亀は亀で、仲良しの亀仲間がいなかったのではないか!と定義しています。
もし二匹とも自分自身が好きであったなら、あるいは自分が育った環境は自分の運命!と覚悟していたなら、こんな争いは最初から起こらなかっただろう!と分析しています。
私は、考えていたこと自体を忘れかけていましたが、50年以上もたってから、お二人の講演記録に出会い、同じように考えたり、解釈したりした人がいた事実を発見し、とても嬉しくなりました。考えたことがこのようにつながって新しい発見と出会いが生まれる・・・こんなことってあるのですね。
結局、ウサギと亀のお話しには、考え方や受け止め方によって違いが出てくるだろうし、きっと「正解」はないのだと思います。しかし、私が小さい時から疑問に思い、いろいろ考えた時間は間違いではなかった!と確信しました。
フランスの哲学者パスカルは、代表作「パンセ」の中で「人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である」という言葉を残しています。人間の、自然の中における存在としてのか弱さと、思考する考え続ける存在としての偉大さを言い表しましたが、皆さんが人間として生きている以上、考えることを意識し、いろいろなことを真剣に考えて欲しいと思いました。

実は、授業においても「思考力・判断力・表現力」の観点で「考えること」を重視して評価しています。これから大きく変化していく社会の中で生き抜くためには、この考える力、つまり疑問に思うこと・想像すること・イメージすること・意識すること・そして、相手のことを考えること、周りの人たちのことを考えること、何より自分のことを考えること、などが必要になるのです。
ぜひ、夏休みは「考える癖を付ける期間」としてみませんか?

次に二つ目は「数えること」についてです。
「日本講演新聞」の編集長「水谷 謹人(みずたに もりひと)さん」が書いた社説「自分はどんなものでできているのだろう」から一部、紹介します。
「自分がどうやってできたのか」を考えると、そこには人智を超えたたくさんの運命的な出来事とともに、多くの人の手が関わっている。
書道家 白水 (しらみず しゅんがさん)は著書「数えてみてごらん」で、
「一体どれくらいの人たちが関わってきたか、数えてみましょう」と語りかける。
「あなたのおむつを替えてくれた人は誰ですか?」
「あなたを幼稚園や保育所に送り迎えしてくれた人、そこで、お世話をしてくれた人は誰ですか?」
「学校であなたに勉強を教えてくれた先生の名前を、何人言えますか?」
「これまで何人のお医者さんや看護師さんのお世話になったことでしょうか?」
「あなたがこれまで食べた食事は、どんな人たちが何人、関わってできたものでしたか?」などである。
人は皆、過去に起きた出来事、出会った人たち、経験してきたこと、食べてきたもの、学んできたことなどでできているのだ。さらに、白水さんは問いかける。
「あなたが生まれて今日までたくさんの人が関わってくれました。その人たちへの感謝を忘れていませんか?」
「また、あなたが生まれる前、懸命に生きてきた、たくさんのご先祖様がいたことを忘れていませんか?その数を数えてみましょう!」と続く。
それに加えて、今の自分を作ってきた出来事、経験、出会いには感情が伴っていたはずという。「辛かったこと、悲しかったこと、悔しかったことなどを吐き出してみましょう。吐き出して、『あれがあったから今がある。』と思えるようになったらいいですね。」と白水さんはまとめる。
先祖を10代さかのぼっただけでも、2046人もの人たちがいる。その全員のDNAも全部、今の自分を構成している。身体を構成する細胞は約60兆個あるといわれるが、その数に匹敵するくらいの人たちと関わっているのだ。遠い先祖まで含めると、どれくらいの数の人を介して、「今の自分」が存在していることか。
そして、未来の自分は、これから出会う人やこれから学ぶことで、さらに作り変えられていくのだ。・・・・・・・という文章です。
「数えること」とは、自分がどうやってできたのか?自分はどんなものでできているのだろうか?と考え、意識し、その数に感謝することです。お盆にご先祖様のお墓参りをしたりするご家庭もあるでしょう!その際に、思い出してみてくださいね。

一年遅れの東京オリンピックが始まり、日本人選手が活躍し、メダルも取っています。そうした選手たちが、必ず口にするのは「感謝」の言葉です。「オリンピックが開催されることへの感謝、周りで支えてくれる人たち、応援してくれる人たちへの感謝」です。
きっと選手の皆さんも、感謝すべき人たちの数を認識し、感謝のコメントになり、その気持ちが、「一人ではメダルは取れませんでした!」の言葉に繋がるのだと思います。
この夏休み期間中の、さまざまな活動の際には、自分の頭でしっかり考え、今の自分をつくってくれている人たちの数に思いを馳せ、感謝しながら過ごしてください。
「考えること」の大切さ、「数えること」の尊さをお話しました。
そして、今回もみなさんにお伝えします。
 生きていることは奇跡的なことで、人生それだけで満点です。
 さあ~明日から夏休みです。
命を大切にして夏休みを過ごし、元気な笑顔を8月18日に見せてもらえることを楽しみにしています。

これで夏休み前の講話を終わります。