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卒業式式辞(令和6年度)
ただ今卒業証書を授与された134名のみなさん、ご卒業おめでとうございます。本校所定の教育課程を無事修了し、今日という日を迎えることができたことは、一人ひとりのたゆまぬ努力の成果であることは言うまでもありません。その努力に対し、心より拍手を送ります。
ご列席の保護者の皆様には、本校の教育に対するこれまでのご支援に深く感謝申し上げますとともに、お子様のご卒業を、教職員一同心よりお慶び申し上げます。
また、ご多用な中ご臨席を賜りました、原田恵庭市長、浅見鶴岡学園理事長代行、豊田PTA会長をはじめとするご来賓の皆様にも、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
卒業されるみなさん。この3年間を振り返り、みなさんの胸に去来するものは何でしょうか。3年間は決して平坦な道ばかりではなく、つまずき悩んだことも多々あったかと思います。その意義に気づくのはいささか先のことかもしれませんが、つまずきや悩みの一つひとつが、貴重な体験としてこれからの人生の糧となることと思います。レジリエンス、「逆境力」という言葉があります。苦しさを乗り越えた体験は、必ずや人の心を、強く、そしてしなやかにしてくれます。
さて、皆さんが社会に本格的に関わる時がいよいよやってきました。この国の、そしてこの世界の未来は、遠からず皆さんが担い、形作っていくことになります。今世界は、歴史的にもまれにみる変化の時代を迎えています。先の見えない時代、正解のない時代という言葉をしばしば耳にしますが、世の中は玉石混淆の様々な情報と価値観で溢れ、従来の常識が突き崩される場面もしばしば見受けられます。もはや、このように生きていけば一定の幸福にたどりつけるという標準的な人生モデルを見出すことは不可能となっています。皆さんは、今しばらくは混沌とするであろうこの世界に飛び込んでいくことになるのです。混沌とする世界で生きていくためには、自ら主体的に考え行動しようとする姿勢と、揺るぎない倫理感や良識、人としてのプライド、そしてともに同じ時代を生きる人々への水平な眼差しがぜひとも必要だと私は考えます。それぞれの生きていく世界で貪欲に学び、社会を見る眼を養い、自分はいかに生きるべきかを見つけ出してほしいと思います。
PTA広報紙に書かせていただいたことを、改めてお話しします。
北海道大学農学部の前身である札幌農学校の初代教頭として赴任したウィリアム・スミス・クラーク博士の遺した「Boys,be Ambicious」(少年よ、大志を抱け)という言葉はあまりにも有名ですが、博士はもう一つ有名な言葉を残しています。それは「Be Gentleman」(紳士たれ)」という言葉です。札幌農学校がスタートした時、日本人教員たちは厳しく細かい規則を設けようとしました。それに対し博士は、規制によって人間の心は育たない。きまりは一つでよい。それが「Be Gentleman」であると説いたそうです。この言葉は極めて厳しい言葉です。そして、人としてのあり方の理想を示した言葉でもあります。どのような精神を抱き、どのように振る舞うべきかを常に自問し、その答えを自ら見つけ出し、そして実践する。その努力が自らを高め、時代の奔流に、周囲に流されない確固たる生き様を生むことになるのです。
世の中は人と人との関わりで成り立っています。人は人によって生かされています。良識をもって自らを律し、良識をもって人と関わることは何をおいても大切なことであり、良識をもって行動できることこそが人としてのプライドをもった姿であると私は考えます。 「人として真っ当であれ」。私は声を大にしてそれを申し上げたいと思います。
さあ、旅立ちの時です。
新たな人生の旅立ちにあたり、眼差しを高く、プライドを持ち、そして主体的に、人としてのあるべき生き方を追い求めていただきたいと願います。
今まさに輝かしい第一歩を踏み出そうとしているみなさんに、心からのエールを送りますとともに、人生の旅路に幸多からんことを祈念いたしまして、卒業にあたっての式辞といたします。
令和7年3月1日
北海道文教大学附属高等学校長 宮路 真人