BLOG
令和6年度 前期始業式 校長挨拶(骨子)
自分が常に思い願っていることを3つばかりお話ししたいと思います。
「情報通信技術やAI等の発達で社会は急速に大きく変化し、遠からずこれまで見たことのないような世界が誕生すると言われている。いまだ多くの大人たちが信じている、正確に言うと信じたがっている『こうすれば一定の幸福にたどりつく』というような標準的人生モデルなどすでに崩壊している。世界は情報過多で、玉石混交の、TruthなのかFakeなのかも定かでない情報が飛び交っている。国境というボーダーが低くなり、多様な価値観や考え方を持つ人々と暮らしていく時代になっている。そうした中で生きていくには、それぞれの人が自分にとっての最適な選択肢を選び取る主体性が大切であり、他者の価値観を容認し共生できる、多様性を尊重する心を持つことが重要だ。」────この言葉はこれまで嫌になるほど聞かされてきたと思います。しかしながら現実には時代の流れについていけない人が多く、世界各地で復古的な動き、差別、自分たちと異なるものへの攻撃、ポスト・トゥルース、すなわち自分が信じたいものだけを信じる行動が目立っています。しかしいかに抗おうとも変化は必定です。歴史をひもといてみても世界は何度も何度も大きな変化をしてきました。ローマ帝国の繁栄も大航海時代以降のスペインやポルトガルの繁栄もいつまでもは続きませんでした。ルネサンスやフランス革命や産業革命の前と後ろとで世界はあまりにも大きな変化を示しました。コロナの時にこの国はここまで同調圧力が強いのかと感じましたが、変化の時代にそんなことをしている場合でしょうか。私たちはある「悪魔の言葉」に捉われています。それは「みんな」という言葉です。みんなが言っている、みんながやっている、みんながそう思っている。「みんな」っていったい誰ですか? 「みんな」という得体の知れないものに捉われないでほしいと思います。個別最適を求める時代です。自分はどう考えるのか、自分はどう行動するのか、まず一人称で考える。そうした姿勢を養ってほしいと願っています。
さて、大人子供関係なしに、失敗を恐れる、恥をかくことを恐れる人が増えているように感じます。本当に完璧な人ならともかく(仮にそういう人がいればですが)、普通の人が失敗しないためには「やらない」という選択肢しかありません。しかし、失敗しないと改善もありません。進歩もありません。若者の特権は「失敗が許される」ことです。どんどん失敗して自分を練り上げてもらいたいと思います。
最後に、他者に対するリスペクトを持ってほしいということも言い添えたいと思います。私たちの周りにはいっぱい先生がいます。自分が知らないことを知っている人はみな先生、自分ができないことができる人はみな先生、見習わなければならないなと思う人はみな先生。年齢や立場など関係ありません。学校の先生は「いささか人様にお話しできるものを持っている」人間であり、全人格的に「先生」なわけではありません。だから私たち教員も周囲の「先生」たちからさまざまなことを吸収しながら成長を続けなくてはならないと考えています。そういう姿勢を持つこと、他者をリスペクトする心が大切で、それは平和な社会の原点でもあります。
新たな学年が始まりました。一人称で考える主体的な姿勢、他者をリスペクトし多様性を認める心、失敗を糧にできる強さ、それらを養うべく、一日一日を送っていただければと思います。ともに頑張りましょう。